化粧11

その一室に満たされている僅かな匂いは、落ち着きを忘れ、狐につままれてしまった美代のこころを見守る役目を果たしていた。 同い年の望美が発散させるものと異なるのは、あくまで近場で計られる駆けっこみたいなものであり、そこには期待が生まれる条件や、一瞬にして鳥肌を浮かびあがらせる異香が付与されておらず、すで…