美の特攻隊

てのひら小説

2013-09-26から1日間の記事一覧

異郷

鉄橋から来た少年

社会人になった夏のこと、そう記憶しているのは初々しくも溌剌とした心境と燃え上がった太陽が互いに認め合っていたという強引な解釈なんかではない。あの日の光景を振り返れば、自ずと勤務先の会社の窓ガラスに張りついた天候がまず一番にまぶた焼きつけら…

初恋

冬の空をよそよそしく感じていたのは、日の光とそぐわない冷たい北風のせいだったようです。 情熱的な蒼穹に躍らされた夏の日々から随分へだてられた気がするのも、やはり肌寒さが身にしみてしまい、折角の晴天はどこか取り澄ました高さで見おろしていると覚…

にゅうめん

静夫が十歳になったばかりの秋でした。 「明日から親戚の子をしばらく家であずかることになったから」と、いつもとは違った目つきで母親から聞かされたとき、みぞおちが急に熱くなってしまって、しかし学校でよく起こす苦痛はともなっていなかったので、胸も…

静寂