美の特攻隊

てのひら小説

2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

月影の武者

月明かりの白砂、穏やかでひとけもない、孤高の波打ち際。喧噪が過ぎた気配は幽かに名残惜しく、ただ独りの鎧武者の陰を映し出している。たった一度だけの、したたり落ちる冷や汗は月光を受けて青ざめており、たぶんそれは私自身の心境であったと思われるの…

さらば夏の光〜10

さらば夏の光〜9

さらば夏の光〜8

さらば夏の光〜7

さらば夏の光〜6

さらば夏の光〜5

さらば夏の光〜4

さらば夏の光〜3

さらば夏の光〜2

さらば夏の光〜10

こおろぎ

長生きしようが、早死にしようが、こおろぎの音くらいこの国に生まれた者でしたら耳にしたことはありませんか。わたしは小さい時分、背丈ほど盛り土された芝生に駆け上がり、指先からはみ出すほどのびた青草をむしる要領で掌を握りますと、面白いくらいこお…

夢のはじまり

あなたに

みずから

睡魔

陽射し

空気

秋日和

巣窟

「まったくなんで火を灯したりするんだろう、こっちは熱くて仕方がない。このまえも何かの弾みで落ちてきたろうそくの固まりで仲間がやられた」 芸太の任務は斥候です。たいがいは彼一匹で遂行されるのでした。人間たちの習性について蟻の芸太が知りうるのは…

邂逅

追想

回廊

吐息は気だるさを知るまえに冴え冴えとした方向をめざしていた。特に目的があるわけでもない、尋ね人や宝探しや意趣返しでもなく、誰かの指令を受けている自覚もなかった。 秋口の呼気がひときわ爽やかに感じられることを忘れていなかったし、季節のめぐりを…

宵待ち

広場

性懲りもなく隣町の隣の町へ遊びにやってきた。今回は案内人がいる。なんでも一風変わった建物があるとかで同行を引き受けてもらったのだが、実はそんな風聞などまったく耳にしたこともないまま、半信半疑でNさんの言葉に従ったわけで、そうかといって期待に…

自転車

ときめき

キャタピラ

放課後

真昼