2017-01-01から1年間の記事一覧
夢の光景にはいつも幽かな調べが流れています。どれほど急展開しようと過剰な乱れが生じようとも、薄明への思慕から遠のくことができないように、自然の理はおののきを袖に含みながら、とても穏やかな威厳を醸しており、それは不吉な予兆さえ、あらかじめの…
お題「花火」
白雲がよく映えた夏の朝、列車を待つホームから遠い町へとのびるレールにふりそそぐ陽射しをゆったり見つめながら、何故かわきあがるべき旅情を制するような、物おじが先立つ足もとに気をとられてしまって、その影は反対車線のさきほどから鈍いを音を放って…
さい果てに あかり灯れば からす影 ねぐらたがわず ふかき夢みし
以前懇意にしていた男に列車のなかでばったり出会った。その面立ちはこころ踊る音楽に浮かれていた頃のことだからよく憶えている。あれこれ互いの近況を交わしながら列車に揺られているうち、あの懐かしい旋律も幾度となく頭をよぎってゆくのだけれど、同時…
もどかしいほど静かなのね。ええ、とてもゆったりとしたさざなみが押してはかえし、かえすさなかあなたの産声をどこか遠くに耳へしたような心持ちが生まれて、それはそれは不思議な響きがするのです。でも生まれたてすぐさまの音色なんか、案じてみてもとり…