美の特攻隊

てのひら小説

2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

東へ西へ

青春怪談ぬま少女〜10

世界の豹変に目を見張り、感動にひたっているのは素晴らしいことだけど、お腹がへっていてはままなりません。うっかり忘れていました。昂った気分にも限界はある。こう言うと身も蓋もないですが、裏返せば限りある感動にふたたび出会うには日常の連鎖を排斥…

眠れぬ夜のために

青春怪談ぬま少女〜9

コンパスの矢は精確な位置をしめしている。目的地をさとす使命を担ってるわりには、小さな手のひらにおさまってしまう頼り気のない丸みと軽さだった。けどその軽さがわたしの足付きをハラハラさせ、緊張にはばまれながらも優美で不遜な意識へと先走りさせて…

季節の記憶

今週のお題特別編「はてなブログ フォトコンテスト 2015夏」

青春怪談ぬま少女〜8

悦ばしき知識ですね。ミミズくん、きみのお陰だよ。「付随するもの」そうか、あれはすでに認識されたことだったんだ。ときおりよぎるランダムな語句を見捨ててはいけません。わたし自身見捨てられずにすみましたから。ともあれ、なかなか立派な革張りの二つ…

ひぐらしのなく頃に

青春怪談ぬま少女〜7

「花に嵐のたとえもあるさ、さよならだけが人生さ。だからよくお聞きなさい。もう会うことはないのだから。あんたが家へ向って歩き出し、途中で忘れものをした素振りでここに戻ろうともそれはあり得ないと言えば、どうかな。奇妙に聞こえるだろうか」なまず…

花の宴

青春怪談ぬま少女〜6

とりあえず客室になるのかな、なんか物置き部屋って呼んだほうがしっくりするようだけど、気遣いなのかひがみなのかわからなさに我ながら嫌気がさして、しきりに恐縮がっていたカエルおばさんの面持ちがまぶたの裏にしみこんだころにはもう意識は薄らいでい…