美の特攻隊

てのひら小説

2014-02-01から1ヶ月間の記事一覧

化粧4

夢心地の断章はときと云うしおりをいともたやすく抜き出し見開かれるべき光景へと連れさる。 めくられる頁のはすでに白日のさなかであった。 今まで感じたこともないその指先から授けられる柔らかな触れあいに対し、美代はなぜか入学式のとき同じ年頃の子ら…

シーツリー

化粧3

「わたし、あの日ね、写真撮ったのよ、美代ちゃんのすがたも遠目だったけど何枚か写したの。でも欲張って枚数の多いフィルム買ったんでまだ残っているんだ。現像したらあげるからね」 それから足しげく望美の家の遊びに通いだしたのは、ものおじしている気分…

ささやき

化粧2

美代は穴があくほど今日はじめて目の当たりにした陽子の顔をうかがったわけでもないのに、自分の家に帰り夕食をすませたあと母と一緒に銭湯に行った際、背中を流してもらいながら湯気でくもりかけた鏡に反射するおさなげな表情が、より頼りない造作で目鼻だ…

証言

化粧1

夢心地のなかにほんの少しだけ、留め置きした感触をどこから招きよせたか詮索するのではなく、淡い色合いをもつ薄紙が漉かれる優麗さすら洗いながしてしまう親しみへ、静かに呼吸をあわせるよう、なすがままであり続けようとしていた。 まくらもとから差し出…

おはよう