美の特攻隊

てのひら小説

2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

虚空のスキャット

青いまぼろし

なだらかな山裾がぼんやり映りだされると夜の空気は流線になった。 眼を凝らすまでもなく、木立から離れてしまった寂しげな枯れ葉が幽かに揺れているのがわかる。その先に静かなみずうみを見いだす予感も訪れて、葉ずれとさざ波が月影へささやき始める。 し…

行人

かがやき

なべ焼きうどん

今日の空模様、窓の外にはやわらかな針のような雨脚、それほど嫌いでもない、煙る町並み。 寂しげな電柱だってよく目を凝らせば、いつもと居場所はかわらない、当たり前か。 でもモノクロ写真としての風情を欲している電線には同情してしまう。どうしてそん…

輪花(りんか)誕生!

cropaさんに無理お願いして絵を描いていただきました(感謝!!!!) に、まず名前をつけてもらいまして、 http://jammioe.hatenablog.com/entry/2013/10/14/164816 輪花という掌編になりました。 そして主人公である「わたし」に、ありがたくも、すがたか…

望郷

ノスタルジア

序曲

明日へ

イマジン

レジスタンス

もう寝ようよ

タンタラスの丘

実際の地であるはずがなく、又かの名勝を模したのでも、あるいは似かよりとも無縁の、ただその名だけがひとり歩きしていたに過ぎないと思う。 どこかで聞きかじった覚えもないところから、感性に疑いを抱く謙虚さは遠のき、自然にわいて出た単なる文字の羅列…

沈黙

ソーダ水

ぼくも好きだよ!

式事

おやすみ

静かね、もう雨はやんだのかしら。 風の音もしない。まど開けてみようか。あら、どうして、そう、じゃあ開けない。 過ぎ去ったから、いいの。 ちゃんと答えて。わかったわ、そうね、明日はきっといい天気になるわね。 夜はいつものように張りつめた糸をあや…

アイデンティティ

あしたにしよう!

伴走

その話しならこの頃そういう気分じゃないから今度ゆっくりね。 それはそうと、あんたこのまえ訊いてたでしょ、ものごころのうちではけっこう鮮明な方だと思うんだけど、犬の名前はたしかペロだったわ。あたし保育園にも行ってない時分だったし、あんたはまだ…

蒼き風

おかえり

輪花 (りんか)

石ころを蹴りながら下校した記憶が不意によみがえった。 連れ立った帰り道は透けてなく、意地らしくひとり、うつむき加減でやわらかな陽射しを受けている光景が振りかえる。 微笑みで、いえ、気難しそうな表情で、そうじゃない、寂しげに、どれもしっくりこ…

蛇の哥

あさき夢みし

桜唇記

桜唇 春雨の領分なぞ取りとめなき想いかすめし今朝の庭、浅き夢にて見遣る心持ちなれば、蒙昧たる証しおのずと雲散霧消されよう。げにも寝ぼけまなこへ映りゆく風物かや、東雲さずけし恩恵と認めるは長閑なるも頑是なき。然るにそぞろ哀しき面影の由縁、何処…

ぬくもり

まどろみ

今日も星がいっぱいだ。 江波純也は今しがたまで、グラス片手に気分を広げ、又特異点のような空間に去来する自分自身へと酔うにまかせていた。 そして、気がつけば酒場を後にコートの襟を立てゆったりとした足取りで、帰途につきながら夜空を見上げている。 …